みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
第3章「パンドラの恋」
世の中ってゆーんは不思議なもんで“会いたない”と思ってるヒトとは、会わへんでも済むように、自然と世の中がめぐってくれはるみたい。


小学校の卒業式の前日、恋文をもろたのにウチが無視してしもた各務くんとは中学が別々にならはった。

ほんでウチが獲るはずやった絵画コンクールの最優秀賞を受賞した各務一葉とも、3年生に進級して別々のクラスにならはった。


どーせなら姉の有紀(アキ)とも、もう顔を会わせたない思う。

ことあるごとにそない思う。

つまりウチは姉がキライやってことや。

ウチとちがって姉は成績優秀の才色兼備で、小っさい頃からウチはいつも姉と比較されもって生きてきた。


親戚や学校や近所のヒトたちの間でも、姉はちょっとした有名人で、そのヒトたちはみんな一様にウチのことを…、

「太宰有紀の妹さん」

…って呼んで、誰もウチのことを「美佳」と個人の名前では呼んでくれへんやった。

ウチにとって姉は同じ親から生まれたとは思えへんほどの、ある意味、雲の上の存在やったさかい、彼女に対する嫉妬や、ねたみみたいな感情は一切あらへん。
< 52 / 142 >

この作品をシェア

pagetop