月と太陽の事件簿5/赤いランドセル
ランドセル
だから大抵の人は近所で事件が起こってるとは思わない。

「朝だったし、怒鳴りあいでもしてくれれば良かったんだけどね」

「窓ガラスが割れた音は?」

「ガラスにセロテープを使った細工がしてあってね、そのせいで割れた音がしなかったのよ」

あたしは現場写真を達郎に見せた。

達郎は「なるほど」とうなずく。

「動機があってアリバイも穴だらけ。なのに逮捕できる証拠はなし。確かに、もどかしいな」

「そう、それなのよ」

あたしは手を叩いた。

「だから達郎、あんたの出番ってワケ」

つとめて明るく振る舞い腕なんか組んでみる。

すると達郎の穏やかでない視線が、再びあたしを射ぬいた。

「レミ、舟本に証言を取りに行ったのお前だろ」

ぐぐっ。

なんでわかったのだ。

「舟本の鼻あかしてやりたくてオレを呼んだワケか」

「だ、だってさ」

あたしは舟本にアリバイを聞かされた時のことを思い出した。

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