月と太陽の事件簿5/赤いランドセル
月見達郎の狙い
あたしと達郎は舟本を乗せた所轄署のパトカーを見送った。

「ランドセルの色でひっかけようだなんて、よく思いついたわね」

あたしは隣部屋の女の子がしょっていた『水色』のランドセルを思い出しながら言った。

「独身の舟本がランドセルに関心あるわけないからな」

あそこまで上手くいくとは思わなかったけど、と達郎はつけ加えた。

「でも最後のは余計だったんじゃない?」

「余計って、なにが」

「もう舟本は触れれば落ちるような状況だったじゃない」

それをあんな風に、舟本のプライドを守るようなことを言わなくても、自供には追い込めたと思う。

「たとえ法廷で教授の行為を告発したところで、舟本の罪が消えるわけじゃないのよ」

自分の行為を正当化しようとアレコレ語ったとこでまったく意味はない。

わざわざ教授の家に忍びこんで大切な論文を破り捨てるという、偏執的で子供じみた復讐が露になるだけ。

つまり舟本は法廷で大恥をさらすだけなのだ。

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