月と太陽の事件簿5/赤いランドセル
少し奇妙な事件現場
「食い気に走るのもいいけど、本来の目的も忘れないでよ」

あたしと達郎が連立って歩いてるのは花見が目的ではない。

今朝方に発生した事件の捜査のためだ。

「事件のことまだ詳しく知らないんらけど」

達郎の語尾がおかしくなったのはしゃべりながら桜餅にかぶりついたせいだ。

ええい、もう25だというのに行儀が悪い!

数々の事件を解決してきた達郎の姿を、誰よりも間近で見てるあたしだが、たまにそれが幻ではないかと思う時がある。

とはいえ民間協力員としての達郎の活躍は警察機関にいる者なら誰でも知ってるのは確かな事実。

「今から話すからちゃんと聞きなさい」

あたしは手帳を取り出すと、少し奇妙な事件の現場について説明をはじめた。



―K大学理工学部の柏木教授(65)の遺体が発見されたのは今朝の午前8時半。

場所は教授の自宅で、第一発見者は出入りの家政婦だった。

発見された時、教授はジャージ姿であった。
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