戦国遊戯
「そっか…どうしよ、私も尾張に向かいたいのに」

呟くと、政宗が後ろからひょいと顔を覗かせてきた。

「じゃ、行けばいいじゃねぇか」

「ひゃぁ!」

突然顔が隣に現れてびっくりする玲子。政宗はにっと笑っていた。

「玲子は尾張に行きたいんだろ?ここへもちゃんと、報告に戻ったんだ。何の問題がある」

言われて、玲子は確かに、と、納得した。

「な、何言ってるんですか!玲子殿と若の約束は、生きて帰ってくることです!まだ若に会っていないのに」

才蔵の言葉をさえぎるように、政宗がかぶせた。

「生きて、甲斐に帰ってきてんじゃねーか。それのどこに問題があるんだ?若様とやらが、玲子の帰りも待たずにどっかに行っちまったのが悪ぃーんだよ」

ふん、と鼻を鳴らす政宗。才蔵は反論できなかった。

「…才蔵さん、私、尾張に行くよ。ゆっきーにも、あっちで会えるかも知れないし」

「しかし!会えるかどうかはわからないではないですか!それに、尾張は今、織田の支配下です。そのようなところに行かせるなど!」

「だぁいじょぶだって!政宗さんもいるんだし!強いんだよ?政宗さん」

ね?と政宗に笑いかけると、政宗はふっと笑った。

「…それじゃ、こうすればいい。俺が玲子を攫って尾張に行ったってな」

政宗は玲子を抱え上げると、門に止まっている馬のところまで走り出した。

「きゃぁ!ちょっと、政宗さん!?」

軽々と持ち上げて走る政宗に、軽くパニックを起こす玲子。政宗は笑いながら馬の前で玲子を下ろした。

「行くか?残るか?」

政宗に差し出された手を拒めば、きっと、尾張には当分いけなくなる。そう思い、玲子は覚悟を決めて、政宗の手を取った。

「よし、行くぞ!」

政宗は玲子を馬に乗せると、その後ろに自分も乗って、馬を走らせた。
門のところで、十蔵と才蔵は深いため息をついていた。
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