戦国遊戯
「…追うか?」

十蔵がポツリとこぼす。才蔵は頭をかきながら、いや、と首を横にふった。

「とりあえず、政宗が玲子を攫って尾張に向かったと、総大将に伝えてくる」

はぁ、と深いため息をつく才蔵。

「若はさくらと、玲子は政宗と、か」

十蔵が呟くと、才蔵は目を見開いた。

「若とさくら、一緒に尾張に行ったのか!?」

「ああ。さくらのやつ、若に熱烈な告白してたぜ?」

楽しそうに笑う十蔵に、才蔵の顔が引きつる。

「どうした、才蔵。顔色悪いぜ?」

才蔵は十蔵にもたれかかる。

「ああー…何が何でも、玲子の後、ついて行くべきだった」

才蔵の言葉に、十蔵は首を傾げた。


さくらが若を好いているのは昔からわかっていた。が、最近の様子では、あきらめたものだとばかり思っていたが…
玲子に気持ちを伝えたうえで、よりにもよって、気持ちを打ち明けてきたさくらと一緒に同行するってのは、若、それはどうかと思うぜ?
それに、玲子もだ。若の気持ちを知っていながら、政宗と2人で尾張に行くってどうなんだよ。若に会うのはやばくねーか?


「尾張で、別にまた、一悶着ありそうだなぁ」

ぼそっと呟く才蔵に、十蔵は不思議そうな顔をしていた。
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