戦国遊戯
ひたっひたっ…。

足音が少しずつ玲子の傍に近づいてくる。足音の方を見ると、暗闇から現れた相手は、玲子の思っていた通りの人物だった。

「田中くん…」

目の前に現れた学は、とても恍惚とした表情を浮かべていた。

「やっとお目覚めかい?」

にたっと笑う学の表情に、玲子は苛立ちを覚えた。

「えぇ…なにか用?」

はき捨てるように言うと、学は嬉しそうに答えた。

「あぁ、君にはこれから起こる、最高のショーの見届け人になってもらうよ」

学の言葉に、玲子は眉を顰めた。

「大丈夫だよ。君はただ、じっと。つながれていればそれでいい。おい」

学は自分の後ろへ声をかけて、誰かを呼んだ。スッと2人の部下らしき人物が現れ、黒い塊のようなものを学の目の前にどさっと捨てた。

「………!」

塊の招待に気付いた玲子は絶句した。

「あぁ、君も覚えていたんだ。そうだよ、今や教科書に載らないことはない、豊臣秀吉、そのひとだよ」

「藤吉郎さん!」

玲子は藤吉郎に駆け寄ろうとするが、手足についている枷がそれを阻み、むなしく金属のぶつかる音だけが牢屋の中に響いていた。

「ま、今このまま殺してしまってもいいんだけどさ。信長がだめだって言うからさ」

面倒くさそうに学が答えると、倒れている藤吉郎の顔を、足でグイっと踏みつけた。

「なんてことすんのよ!」

止めることもできず、だた、ひたすらに叫ぶしかできない自分の状況に、玲子は歯がゆくて思わずぎりっと歯を食いしばった。
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