戦国遊戯
幸村率いる別働隊は、夜霧にまぎれて、本体と離れ、移動を開始した。
いよいよ幕開けだ。

どのくらいたっただろうか。夜霧が少しずつ晴れてくる。空も少し白んできた。山の朝だからか、少し肌寒い。

目を閉じて、ふぅ、と、息をすった。
はぁ、と息を吐くと同時に、目を開ける。

目の前には、大勢の武装した人たちがいる。が、ちらちらとこっちを見ていた。


制服って目立つよね、やっぱり…


甲冑の中に、薄い布でできた制服を着た女の子がいれば、確かに気になるだろう。が、そのせいで、気が散ってしまった、というのはまずい。

他の人たちより、先に出なくちゃ。
そう思って、腹をくくった。


出陣の合図が当たりに轟くとともに、その場を駆け出した。
後ろでなにやらどよめきが聞こえ、兵達の出足が遅れていた。

気にせず、しばらく走って行くと、敵方の兵士達の姿が見えてきた。木の陰に隠れて、相手の様子を確認した。


数は…3、…6、…10。
うーん、多いな。獲物は全員、槍、か。いけるかなー…ちょーこえー。


深呼吸をひとつして、ダッと兵士達の所へと駆け出した。

「はぁ!」

鞘からは抜かずに、脇差を甲冑の隙間の部分に打ち込んだ。

「ぐあぁ!」

止まらずそのまま進み、周りの人たちへ、2撃・3撃と次々打ち込んでいった。

「うわぁ!」

「な、なん…ぐわっ!」

一斉に周りにいた兵士達が集まりだす。

「こっちだ!急げ!」

「あー、もう、多い!甲冑チョー邪魔だし!」

息をつくまもなく、次々と現れてくる兵士を、寸分の狂いなく隙間に打ち込んでいき、なぎ倒していった。
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