ふたつの指輪

3. 許してくれるなら

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(あたし、何やってんだろ)



あのときと同じような安っぽい内装の小さな個室を見回して。


あたしは目まいを起こしそうになってた。





せっかく、尊さんが助けてくれたのに。


まさか、またここに戻ってくるなんて。



――どうやらここがあたしにお似合いの場所らしいよ。


あたしは自嘲気味にそんなことを思った。






あの後。


ふたたび眠りに落ちたあたしが目を醒ますと、もう魁人くんの姿はなかった。


服はきれいに整えられていて。

魁人くんに初めて抱かれた、あの夢のような時間の痕跡はどこにもなかった。
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