ふたつの指輪
目の前には、浅黒い整った顔。

黒いまっすぐな髪が引き締まった頬にかかってる。



(あ――!)



あたし、昨夜この人の部屋に泊まったんだった。


急に意識が現実に戻ってくる。




「おまえの起こし方、大体わかった」


そう言って、片方の口の端をつりあげてニヤリと笑う。


「……」


ビシッとしたダークカラーのスーツは、この人にびっくりするほど似合ってた。

いかにも仕事できそうで、何かのポスターにでも出てきそうな感じ。




――あれ?


昨夜と何かが違う……


「眼鏡、かけてる……」


「悪いか」


細い黒縁の眼鏡の奥で、ジロリと黒い眼が睨んだ。
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