Magic Academy ~禁書に愛された少女~
「時々、ここに来てもいいかな?」

そらは顔を上げて、ユエに言った。ユエは眉を顰める。

「今言ったでしょ?人に関わりたくないって」

「でも!誰も世話にきていないって知って、放っておくなんてできないよ」

そらが悲しそうな表情をすると、ドルイドがそらの肩をぽん、と叩いた。

「君がいなくなってしまったらどうするんだ?誰が仲間に水をやる?」

ドルイドの問いかけに、ユエは口ごもった。

「それは…」

「意地を張らずに、頼れるときには、頼ってもいいんじゃないか?」

ユエは何も言わずに、黙っている。

「そうだって。毎日ってわけにはいかないと思うけどさ。これるときにはこっちにくるし」

うみの言葉に、ユエは考えとく、とだけ言い残して、姿を消した。


こうして、1つ目の不思議の正体がわかった。
人型になったマンドレイク(ユエ)が、水をやっている姿を目撃されていたため、そう言った不思議が出てきたようだ。

(人型になるには、相応の魔力が必要なんだ。それがないってことは、その薬草自体に、あまり魔力が無いってことになる。ま、マンドレイクに限ったことじゃないがな)

シークが言った。

(…なんで魔力が無いの?)

そらの問いかけに、シークはぽつぽつと話してくれた。

(薬草なんかの植物に魔力を持たせるには、人が大切に育てることが条件なんだ。魔力を持った者に、水なり肥料なりをもらうと、そのとき、無意識のうちに、魔力も注がれるんだ)

ユエは古株のようで、シークのことを知っているくらい昔から生きていたマンドレイクらしい。だから、今でも、人型を保てるくらい、魔力があるらしい。
でも、他のマンドレイクたちは、ユエが育てているため、魔力がなく、人型になることができないらしい。

4人は温室を後にした。
そらの胸の中に、少し、切ない気持ちが残った。
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