月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
蝶は奔放なり
「昨日の夜?ああ、確かに飲み過ぎだと注意しましたよ」

ホストクラブ『エアリアル』支配人室。

あたしと達郎は『エアリアル』社長と向かい合っていた。

達郎が「関係者に会えるだけ会いたい」というので、近場から会うことにしたのだ。

本人も「義経」なる源氏名を持つ現役ホストである社長は、やたら目力のある人だった。

「しまいにゃテーブルに上がってピンドン一気なんかはじめやがりましてね。ろくすっぽ接客しないので怒鳴りつけてやりました」

その時のことを思い出したのか、社長は眉間にシワを寄せて怒りの表情を作った。

目力があるだけに、言葉にも迫力が加わる。

あたしは少したじろいでしまった。

「東さんが飲み過ぎることはよくあったんですか?」

達郎の質問に対し、社長は腕組みをして考え込んだ。

東の勤務態度を思い出しているのだろう。

眉間のシワがますます深くなる。

顔面神経痛にならないか心配になった。

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