月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
現実は夢
「私はその後もしのぶと割り切った関係を続けました」

横倉は淡々と続ける。

「どんな形であれ、彼女と離れたくなかったんです」

横倉は手にあった煙草を灰皿へ放り込んだ。

火はすでに消えていた。

一口吸っただけで、後はずっと語り続けていたのだ。

奇妙な、信じられない物語を。

あたしの手のひらには汗がにじんでいた。

東久志の話を聞いた時と同じ感覚だった。

事実、美女が夢の中で喉を切り裂かれるという内容は一緒だったではないか。

「お恥ずかしい話をしてしまいましたかね」

横倉が苦笑混じりの視線を向けた。

あたしはあわてて首を振った。

「捜査の参考にさせて頂けます」

なんとかそう言った。

そうとしか言い様がなかった。

小山洋子に目をやると、彼女は口に両手をあてていた。

見開かれた目には怯えとも驚きともつかない感情が浮かんでいた。

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