月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
夜の蝶が見た夢
東久志の自宅マンションを訪ねた。

本来は出勤日だったが、事件の事情聴取で昨夜からほとんど寝てなかったため、休みをもらったそうである。

あたしたちがインターホンを鳴らすまで夢の中にいたらしい。

にも関わらず、ガウン姿の東は屈託のない笑顔であたしたちを迎え入れた。

「すみません、おやすみのところを」

「いえいえ、刑事さんもお仕事ですからね」

そう言って東は客用のソファーをあたしたちにすすめた。

うーん、ハタチらしからぬ気の配り方。

さすが接客のプロ。

「へぇ、月見さんは刑事ではないんですか」

達郎を紹介すると東は目を丸くした。

童顔で、人懐っこい仕草をする男である。

店では母性本能をくすぐるタイプで売ってるに違いない。

「もう何度も訊かれたかと思いますが、昨夜の出来事をもう一度話してもらっていいですか?」

あたしが促すと東は

「いいですよ」

とうなずいた。

「信じてもらえるまで何回でも話します」

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