狐面の主人


真っ先に目を引く赤い羽織りに、高価そうな桜色の着物を着込み、

顔には、妖しげな雰囲気を醸し出す、狐の面――――………。


女は名を、五穂といった。




「女、面を取ってみろ。顔によっちゃ、買ってやらないこともないぞ…?」


五穂を舐めるように見つめる男。

しかし五穂は、



「あなた様が買って下されば、面を取って差し上げますよ。

まぁ、あなたのような下品そうな殿方には、どの娘も勿体無いでしょうけれど…。」


くすくすと笑い、奥に引っ込んでしまった。

< 133 / 149 >

この作品をシェア

pagetop