狐面の主人





炎尾の寝室――







「…よし。」


いつも着ている、ゆったりとした着物は脱ぎ、
代わりに礼服を来た炎尾の姿。

相変わらず能面は被ったまま。



着付けは全て一人だけでしたらしく、帯が少々歪んでいた。

けれど、それを気にするよりも炎尾には気にかかる事があったのだ。





「粗相の無いようにせぬとな。
方々が着くまで、もう時間も無い。

五穂の準備は…。」




台所へ向かおうと、ふすまに手を掛けたとき、










ガラッ



「!」


「あっ…炎尾様…ッ!!

ご、ご、ご無礼つかまつりましたッ!!!」



素早くその場に土下座をする五穂。
癖なのだろうか。

炎尾はしばし呆気に取られていたが、ようやく正気に戻った。



「立て、五穂。

何かあったのか?」




五穂がゆっくり顔を上げた。



その顔は、輝いていた。


「…………。」


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