COLORS【紫】パープルA
窓際のヒマワリ
 「それにしても……」

「なんだよ」

配達専用の車に乗り込むとバンっとドアを閉めた。
助手席に座ってもシーベルトだけはしっかりとってね。

「いつの間にあんな花束用意したの?」

「ああ……あれね。美人にはバラの花って決まっているんだよ、昔から」

「どーいう理屈よ。しかも!!あれはウチの取り扱っているバラの中でも最高級のヤツでしょ!!」

「まぁまぁ、いいじゃねぇか。減るもんじゃなし」

「減るわよっ!!……いいわ、今度の廉の給料から花代引いてもらうから!」

「ケチ」

店の商品を勝手に自分の都合で持ち出すな……って今に始まったことじゃないけどね。
そう、考えてみれば廉と組むようになってから――五年かぁ。
長いような短かったような。
気付いてみりゃ十八歳だった私も二十三歳。
廉は確か二十四歳だっけ?

そーいや、周りが徐々に結婚して自分だけ取り残されているんだとか嘆いていたもんな。(笑)
この歳になりゃ世間なんてみんなそんなもんよ。

「あっ!コンビニ!!寄ってこ、張り込み用の買い出ししなきゃ」

「了解」

狭い駐車場に車が止まると私は降りた。

「廉はいつものでしょ、買ってくるから待ってて」
こういう時コンビニに買いに行くのは私の仕事となりつつある。

鮭のおにぎりと缶コーヒー(しかもブラック)とマルボロの赤。
これが彼にとっての必需品。
それ以外はペットボトルのお茶を数本とおにぎり、パンを適当にカゴに入れレジに向かった。

あいにく二つあるレジは埋まっていた。
右側のレジは近所に住んでる学生が夜食を買いに来たって感じ、左側にはミニヒマワリの鉢植えを片手にした青年が居る。
きっと近所の花屋かスーパーで購入してコンビニに寄ったのだろう。

「ヒマワリ……か」

何故かその印象がすごく強く頭に残っていた。
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