赤と黒の心理学
肉体の悪魔

うわべだけの愛

「あ、あのさミウ…。」
「ん、なーに?」
 京は女装しているときは「ミウ」と名乗り、かなり声のトーンを上げて話している。そうしていると男だとバレず、そんな自分を皆が本気で「女の子」だと思って接してくれるのが結構嬉しかったのだった。
「俺ミウのこと好きなんだ!一目惚れだったんだよ!…付き合ってくんない?」
「ほんと!?嬉しいなぁ!ミウも貴方のことちょっと気になってたんだぁ。」
 京はこれまで何度か男性に告白されては女のフリをして付き合ってた。「女の子」になってしまうことで妃美子への想いを断ち切れるとも思ったし、自分を男とも知らず騙されてる男性を見てるのもちょっと面白かったりする。実は性格悪い京(20歳・♂)であった。
 だが偽りの恋人関係が長く続くはずも無い。
「なぁ、良いじゃんかミウ!」
「嫌っ!やだっ、まだしたくない!」
 体を求められると、さすがに隠し通せないので拒否するしかない。それでも相手はなかなか諦めてはくれないのだ。
「良いじゃんか!俺達恋人だろ?俺のこと好きじゃないのかよ!?」
「あんただって俺のこと好きじゃないから無理強いするんだろ!もう良いよ、じゃあな。」
「え…?」
 そう言って別れるパターンが何度もあった。
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