……今日も、雨。

 音なく降る雨を見て、私はそっと溜息をついた。

 先ほどからずっとこの離れの縁側に座り、桜の花を見上げ続けている。

 紬の着物。
 黒塗りの簪。

 略装とはいえ、普段なら許されない奇怪な行動だとは思う。

 何をやっているのかと不審に思われても仕方ない。

 けれども、「立場を考えて下さい、綾子さまは仁科家の女主人なのですよ!」と口煩い女中の声は聞こえてこなかった。

 私が、人払いを命じたから。

「綾子?」

 反射的に顔を上げると、優しい笑みを浮かべる夫と目が合った。

「えっ、あ……おはようございます、お体の調子は如何ですか」

「まあまあだよ」

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