「桜さん」

 呼びかけると桜さんはきちんと僕を見て首を傾げた。

 きちんと、ってことはそれまで桜さんがどこか心あらずの状態にあったってことで、僕は面白くない。話している時くらい顔を見て欲しいものだ。

「ん? なぁに?」

「今日って桜さんの誕生日? 隠さないで教えてよ」

「……何でそう思うの?」

 手っ取り早く当たっているのかいないのか教えてくれれば良いのに、わざとはぐらかして問い返す。

 僕はふんと鼻を鳴らして、舶来のかすていらとかいうお菓子が乗った白いテーブルに頬杖をつき、玄関をびしりと指差した。

 白薔薇のアーチの先には今は誰もいないが、僕は知っている。

「毎年、決まってこの日にお花を持ってくる男の人がいるよね。去年は白薔薇、一昨年は桜」

 違うとは言わせない。

 桜さんがこの洋館に引っ越してきてから、少なくとも二十四回は同じ男の人が桜さんに会いにやって来ている。

 つまり月に一回の計算だ。そして二十四回中二回、男の人は花を持って来て桜さんに突っ返されている。

 どうだ、ここまで分かってるんだ。下手に誤魔化そうったって無駄だからな。

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