「旦那さま、一体どうなさったんでしょう」

 朝餉を囲み、また給仕している誰もが思い、しかし口にしていなかったこと。

 その口火を切ったのは、この家で働き始めたばかりの若い女中だった。


 ぽつりと呟かれたそれを切欠に、私と同年代の女中達を中心として密やかに会話が広がっていく。

 普段であれば聞き流しているけれど、今日ばかりは右から左へ流せなかった。

「――そうですよね。もう三十分も過ぎていますよ」

「どなたか起こしに行った方が宜しいでしょうか?」

「お体の具合が悪いのかもしれません」

「でも、朝早くの旦那さまって不機嫌ですし。少し怖くて……」

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