37.3℃のキス《短》
38.7℃

「母さん? 俺、今友達の家だから。うん、じゃあ」

誰の声だろう……

意識を取り戻した私はベッドに寝かされていた。


「澤村起きたのか? 大丈夫か?」

すると視界に映ったのはクラスメイトの山岸君で、一瞬パニックになる。

なんで山岸君がここにいるの?

だけどそれを言葉にする寸前に色々なことをぼんやりと思い出した。


「……うん。迷惑かけてごめんね」

素直にそう謝る。

おでこには冷えたタオルが乗っていて、山岸君が看病してくれたことがわかった。


「今、熱は38.7℃。さっき医者呼んで見てもらったんだけど……熱が完全に下がるまでは学校は休めだって」

山岸君は困ったように笑うだけで、そう私に教えてくれた。

そっか。家に呼べばよかったんだ。まったく思いつかなかった。

「山岸君……ありがとう」

そう言った私に山岸君は優しい笑顔で返事をしてくれた。
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