恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
Act.2 「終わって、はじまった日」
おにーちゃんがあたしの中学に、体育の教育実習生としてやってきた当日の昼下がり、わが2年3組の男子どもの視線は一人残らず、ただ1点に釘づけになっていた。


男子どもの視線の先には、おにーちゃん同様、今日から教育実習生としてやってきた若くてカワイイ女のヒトの姿があった。

英語の教育実習生――つまり、ルリ先生が黒板に向かって、白くて長い指先でつまんだ、白いチョークを滑らせる度に、男子どもの視線は釘づけになった。

それというのも彼女の着ている白くて薄い生地のブラウスが光の加減で透けてしまって、背中の白いブラジャーのラインがうっすら見えていたからにほかならない。


“…ったく下着のラインが見えたくらいで目の色を変えるなんて、ホンット、ウチのクラスの男子どもときたらガキなんだから……”

あたしはココロの中でつぶやいて、ただひたすらに呆れ果てた。


「……ということで、通常“have”は“持っている”という意味で使われますが、いま私が黒板に書いた例文のように……」

ルリ先生が黒板のほうを向いたまま、ボソボソという感じの小さな声でここまで言ったとき、教室の後ろから監督していたアラフォーの藤先生がすかさず大きな声を上げた。

「発言するときは、ちゃんとまっすぐ生徒のほうを向くように。あと声が小さいわよ」

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