月の雫 -君と歩む彼方への道-

1.全身の傷は

オレはまたしても、じいさんの部屋に入り浸っていた。

おやつの時間に来れば、いつも何かにありつけるっていうのもある。

なんせ成長期だから、やたらおなかが空くんだ。



研修上の疑問やらなにやら、話し込んだあとに。

オレはふと思い出した。


「そうそう、じいさん」

「じいさんはやめなさい」

「昨日、シルヴァイラの怪我に薬を塗ろうとしたら、背中じゅう傷あとだらけだったんだ」

「……」


じいさんは、白い眉を片方上げた。


ふと、脳裏に、どこかなまめかしい白い背中の映像が浮かんで、オレはあわててそれを振り払った。
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