不機嫌な果実
〈1〉腐ったミカン



「ただいま戻りました!」


フロアーに響き渡る威勢のいい声で、相澤弘樹(あいざわひろき)が得意先から帰社した。 


営業局・営業二部所属の相澤は、社内外からも期待されているホープだ。


顔の表情から今日の商談がうまくいったことを如実に知らせた。 


「お疲れさまでした。
相澤さん、コーヒーどうぞ!」


そんな相澤に、今春入社したばかりの菊池美和(きくちみわ)が素早く駆け寄り、トレイから相澤愛用のマグカップを差し出した。


「ありがとう」 


相澤も笑顔でそれに応え、マグカップに口をつけた。 


その隣で、満足そうに美和が微笑んだ。



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