目が覚めて、全てが夢だったことに出来るなら、


何を引き換えにしてもいいとまで思った。



あの夏の日。



私は寝苦しさに、何度も寝返りを打って。



結局、目を開けて目覚めて、


それが夢じゃないことを、


もう1度自分に言い聞かせるのが怖くて、


真実から目を背ける為だけに、


ベッドに横になっていた。



だけど、


夏の日差しが降り注ぎ始めた部屋の中、


汗でびっしょりになったシャツと、


シーツが身体に纏わりつく、その感覚に耐え切れず、


私は結局暑さに負けて、


目を覚ました。




それでも一瞬、



『夢を見た』。


そう思えた自分が、


ものすごくふざけた人間のように感じて、


嫌悪感すら浮かんだ。



…何が夢だったというの。



私は窓のカーテンレールに吊るした、


その白いドレスに、


険しい視線を向けた。


やっぱり、夢なんかじゃない。



夢だったなら、



あのドレスが今、


この蒸し暑い部屋で、


風を孕んで揺れているわけがない。



私は額に浮いた汗を、


不快に感じて手の甲で拭いながら、


ベッドから降りた。



そっと窓辺に近寄って、


カーテンを薄く開いて外を見て、


家の前に集まった、


騒がしい報道陣の姿を目に焼き付けて、


溜め息をついて、


カーテンをピッチリと閉めた。



そして窓を背にして、


カーテンを後ろ手に握り締めて、


怒りとも悲しみともわからない、


不思議な感情が胸に湧き上がるのを感じた。



汗で湿った寝巻が気持ち悪くて、


本当はシャワーを浴びたいのも我慢して、


私は着替えだけを済ませて、


部屋を出ると階段を下りた。