お父さんもお母さんも、


晴樹さんの両親に、


土下座して謝った。



だけど、その頃には、


ただの花嫁の失踪と言うよりも、


何か悪いことでもあったんじゃないか。



みんな何も言わないけど、


そう確信していた。



その夜は、


晴樹さんとお姉ちゃんが予約していた、


そのホテルのスイートルームで、


私達は誰も喋らないまま、


気まずい一晩を過ごした。



晴樹さんは黙りこくったり、


突然立ち上がって部屋をうろうろしたり、


落ち着かない雰囲気だったけど、



その左手の薬指に光る、


片割れのマリッジリングが、


妙に冷たく光って見えた。




何の情報もないまま、


翌朝ホテルをチェックアウトして、


私達はそれぞれの家に戻った。



晴樹さんは私達と一緒に、


うちの方で連絡を待つ、と、


両親に話していたけど、


晴樹さんの心情を心配してか、


ほぼ無理矢理、


実家に連れて帰られた。




タクシーに乗り込みながら、


櫂が私を振り返った。


そして私に、


小さな紙切れを渡してくれる。



「…何かわかったら、


俺の携帯に直接連絡して。


…親父たちも兄貴も、


多分冷静に聞いてられない」


そう言って、


タクシーに乗り込んだ櫂に、



…何かって、何?



そう聞きたかったけど、


その場にいたみんなが、


最悪の事態を予想しているのも、


雰囲気でわかった。




家に戻ってきた私達は、


みんな一睡もしていないのに、


誰も休もうとはせず、


リビングで押し黙っていた。