それまで、


何の連絡もなかった水澤家から、


櫂が私の携帯に、


電話をして来た。



携帯に表示されたその名前を見て、


一瞬、無視してやろうかと思った。



櫂だって、水澤家の人間。



私達が辛い想いをしていた間、


まるで無関心を装っていた、


水澤家の人間。



そう思って、最初の電話は、


無視して、着信音が鳴りやむのを待った。



だけどその少し後に、


また同じ着信音が鳴る。



それを聞いて、


私は携帯を手に取った。



そして、迷った。



あの日、お


姉ちゃんの遺体が発見された日、



『いつでも連絡して』と、


私に言ってくれた櫂。



いつもと雰囲気が違って、


とても頼もしく見えた櫂。



私はそれを思い返して、


…櫂なら。



決心して、通話ボタンを押した。



「…もしもし」


「…繭?俺。櫂」


短い言葉に、


うん、と返事をする。



だけど、


それ以上は何も言わない。



その沈黙だけで、


櫂は私が、


今までどんな気持ちを水澤家に向けていたか、


わかった様子だった。



「…これまで、ごめん。


何も連絡できなくて。

…その…。


やっぱり、兄貴や親父達のこと考えると、


むやみに連絡できる状態じゃなくて」


櫂が私の沈黙に、


そう謝ってくるけど。



「…言い訳なんか、いい。


何の用?」


私は冷たく突き放した言い方をした。