1周忌の法要が済んで、


親戚たちが食事を終えて、帰って行った後、



「繭、帰るわよ」


お母さんが、


私を振り返って、呼んだ。



綺麗に掃除をして来た、


お姉ちゃんのお墓のある墓地を、


少し遠くに見ながら、


私は何となく後ろ髪を引かれる想いがして、


少し黙った後、


先に帰って、と、


お母さんを見た。



私の返事に、


お母さんは怪訝な表情をする。



「…ここまで車でどれだけ掛かると思ってるの?


1人じゃ、帰って来るのも大変なのよ?


バスだって少ないし、


電車だって不便だし」


「…いい。


お母さん達は、気にしなくていいから」


私の返事に、


やっぱりお母さんは怪訝な表情で、


お父さんに肩を叩かれて、振り返った。



そして、呆れたように首を竦めた。



「…知らないからね。


お母さん達は、先に帰るわよ」


お母さんはそう言うと、


お父さんと並んで、


駐車場に向かって歩いて行く。



私は黙ってそれを見送った。



自分がどうして、


そんな大変な帰り道を選んだのか、


よくわからない。



この真夏の暑い中、


黒い喪服を着て立っているだけでも、


汗が浮き出て来るような日差しの中、


何を好き好んで、


バスと、何本もの電車を乗り継いで、


帰ろうとしているのか。



だけど。



呼ばれた気がした。



ここの墓地にある、


真新しいお墓の下に眠っているお姉ちゃんに、


呼ばれた気がした。