ほどよい愛

市橋の家から会社まで、透が車で送ってくれた。
昨日一日部屋に籠って作り上げた模型を膝に抱えて助手席に座っていると、眠気に負けてうとうとしてしまう。

「その家の模型ってどうするの?仕事か?」

「え…?あ、違うの。単なる小道具」

「小道具?」

運転しながらチラチラと私と模型を見る透。
私の膝にのっている家の模型は30cm四方の2階建。屋根は切妻で、縁側が広くとられた和風の家。

今日の明け方までかかって作り上げた力作。仕事に就いてからは図面ばかりを書いていて、模型を作ったのは久しぶり。

よく見れば、私の願いがわかってもらえるはず。
そう、よく見れば…。


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