ほどよい愛



10歳の時に両親を交通事故で亡くしてから、双子の兄の透が私を守ってくれた。
そして、
両親ともに一人っ子で親戚の少なかった私達に手を差し延べてくれたのは、両親とは大学時代からの親友だった市橋夫妻だった。

訃報を聞いて、真っ先に駆け付けた二人は、親友を亡くした悲しみは後回しにして、何も考えられなくて、想い全てを凍らせてしまった私と、そんな私を必死で守ろうと震えていた透を温かく抱き締めてくれた。

「大丈夫だからね」

「ずっと一緒にいるからね」

その言葉を聞いて、初めて私と透は涙を流した。
< 37 / 302 >

この作品をシェア

pagetop