午後からの打ち合わせの最中だというのに、亡くなった両親の事を思い出したのは、私の横で資料をめくる恭汰のせい。

資料室で私を棚に追い詰めて首筋に赤い花を咲かせながら。
艶めいた声で。

「週末はおとなしくしてるんだぞ」

「…え?どういう…」

「この印が役立つような事をしないってこと」

「…っ」

その意味がわかった途端赤くなったに違いない私の頬を、優しく指で撫でながら

「おみやげ買ってくるから。いい子にしてろよ」

それは、あの日そう言って帰って来なかった両親と同じ言葉。

にっこり笑って出かけたまま二度と帰って来なかった二人。

その日の悲しみが体の奥から生まれてきて、足が震えてきた。恭汰の頭に回していた手に力をこめて抱き寄せた。
おみやげなんていらないから…そんなのいらないから、私の側から消えてしまわないで。
思わずつぶやいてしまいそうになる気持ちをぎゅっとおしとどめて、

「恭汰、お願いキスして」

普段そんな事を言わない私の言葉に一瞬たじろいだあと、瞳の奥に温かい色を浮かべて、深く優しいキスを繰り返してくれた。
何度も交わした事のあるキスだけど、私がせがんだのもこんなに応えたのも初めてで。