「誰かに、何か聞いたのか」


車を走らせながら、担任は言った。


煙草くさい車の中が、なんだか切ない。


「俺、二人は付き合ってたんじゃないかと思ったんです。

会長はカモフラージュするようにいろんな男との噂を作った。
カモフラージュする必要がなくなったから事件のあと会長に男の噂がないのかなって」



「あの事件は……
会長から仕掛けたんですよね」


窓を開けたい。

でも、冷房がきいてるのに開けるわけにもいかない。

早くこのにおいから逃れたかった。



「会長は、先生が俺に『佐伯とはあまり関わるな』って言ってたことを知って、嬉しそうに『正しい』って言ってました。

あの事件、会長は否定して、あの男は認めた。
たぶん、お互いがお互いを守るために。

でも正しいのはどちらか一つです。

会長が嬉しかったのはきっと、先生があの男は何も悪くないと信じてくれてると思ったからです」