准教授 高野先生の恋人
6.桜吹雪と春嵐

毎年そうだけど3月って本当に慌しくあっという間にすぎて行く。

初旬。

産後の肥立ちが芳しくなく長逗留していた秋ちゃんが、

ようやく律くんと二人で札幌へ帰れることになった。

思いのほか長い滞在になったのは秋ちゃんの体調のことが一番の理由ではあるけど、

それにかこつけて、秋ちゃんのお父さんが無理無理二人を引きとめていたのだ、と。

そんな諸々の話を秋ちゃんから聞いたのは、彼女が札幌へ発つ三日前のこと。

私と秋ちゃんはY駅から少し歩いたところにある二人のお気に入りの喫茶店にいた。

「秋ちゃん忙しいのに良かったの???」

「うん。お母さんが、律は看ててやるから出かけてこいって言ってくれてさ」

「そっかそっか」

「なんだかんだで実家では楽させてもらってたけど、それもぼちぼち終わりだもんね。

向こうに戻ったら頼る人いないし何でもやらなきゃだからねぇ。ひえ~だよ」


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