准教授 高野先生の恋人
7.永久就職という選択肢

いつもだと土曜日の診療所は比較的混んでいて、患者さんが絶えることがない。

けれども今日は珍しく外来の波が一段落し、ぽっかり空いた時間ができていた。

誰もいない待合室には無駄に明るい液晶テレビが煩く虚しくついているだけ。

私はぼんやりと頬杖をつき、昨日のことを思い出した。


カスガイがうちに泊まりに来るのは学生のとき以来。

部屋に入るなり彼女は目敏くベッドの上のフランソワに食いついた。

「何こいつー!?うわっ!デカッ!!」

そう言うやいなやベッドの上でくんずほぐれつの格闘を始めるクマとオンナ。

「ヨーシヨシヨシヨシ!ワッシワッシ!」

「あのさぁ、カスガイ……」

「噛まれたときは引いちゃだめです」

「はいはい、押すんでしょ?って……」

まったく、うちはナントカ王国じゃないんですけど……。


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