この世で一番大切なもの
「いらっしゃいませ～！」

店内に大きな声が響き渡る。

キャバクラ嬢風の女が売れてそうなホストと席に座る。

「よし行こう。あの人は常連さんだから大丈夫だよ。やってみて」

俺は緊張する。

先ほど教わったようにドリンクの注文を聞く。

「おっ、新人。えーとビールお願い～」

ビールの小瓶を取って、テーブルに出す。

手が震える。

ビールは泡ばかりにならないように上手くグラスに注がなければならない。

客と担当のホストの分を作る。

「どうぞ」

声が震える。

クーラーが効いているのに顔から汗が出た。

客の顔を見ると、とても綺麗な人だった。

今まで話したくても話したことのない美しい女。

なぜこんなモテそうな女がホストクラブにくるのだろう。

そう思ってしまった。

「こちらはユキさん。で、うちの売れっ子のレイヤさん」

ユウタが紹介してくれた。

「体験入店のリュージです。よろしくお願いします」

「いい名前だなあリュージ。てか、売れっ子って紹介したけどナンバーワンじゃねえぞユウタ！」

レイヤが笑いながら言う。

「先月ナンバースリーじゃないですか。売れっ子っすよ」

ユウタが調子よく答える。

「バカヤロ～！ナンバーワンじゃなきゃ、二番目もビリも同じなんだよ！飲め飲め！！」

「グイグイ！！グイグイ！グイグイよしこーい！！」

異常なハイテンション。

レイヤのコールで、ユウタがビンのままビールを一気飲みをする。

ユキは楽しそうに笑っている。

ビールの小瓶がもう空いた。

「おう、リュージ。ユウタと自分の分のグラス持ってこい。飲むぞ！」

「は、はい」

俺は急いでビールの小瓶とグラスを取ってくる。

もうすでにホストという仕事が面白く感じていた。

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表紙・目次

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