この世で一番大切なもの
第十章
「いらっしゃいませ~!」

俺は無事同伴をすることに成功した。

他の二人の女にはドタキャンされた。

危なかった。

確実に同伴で連れてきて良かったとホッとした。

女は信じられない。

女は嘘をつくものだ。

客は呼んだ。

だがここからが問題だ。

女にはオゴルと嘘をついている。

だがしかしそんな金はない。

そう、女が持っているカードをなんとしてでも使わせなければならない。

手段は選べない。

ヘルプがついている隙を見はからって、トイレに行く振りをして裏で休んでいるレイヤに話に行く。

「とりあえず呼べました」

「おう、よくやったじゃねえか。俺も今日忙しいけど後からリュージの席着くからさ。ベロベロにでも酔わせて、記憶なくさせてカード使っちまおう。それか寝てるすきに抜き取ってもいいしな」

「はい。ありがとうございます」

恐ろしい会話をしているのは分かっていたが、とまどいや迷いはなかった。

もはやある一線を越えてしまったのかもしれない。

俺は席に戻る。

女は売れない先輩のヘルプと退屈な会話をしていた。

俺が帰ってきた途端、嬉しそうな顔をした。

「俺のこと好き?」

俺は女にいきなりそんな質問をした。

「えっ」

女はもちろん動揺する。

顔が真っ赤になって返事もできない。

そんなのは分かりきった反応だった。

「なんで何も言わないんだよ!飲め~!グイグイ!グイグイ!」

飲ませるのが狙いだった。

「グイグイ!グイグイ!」

ヘルプも声を合わせる。

女はグラスに入った焼酎のミルクティー割りを飲み干す。

つらそうな顔をしても、女は嬉しそうだ。

顔が笑っている。

無理矢理飲まされてエムだから興奮しているのだろう。

それとホストにはまる女なんて破滅的な人間、病んでる人間だ。

飲んで現実を忘れたいんだろう。

バカな女だ。

「いっぱい頂きま~す」

レイヤがきた。

「え~レイヤさん着いてくれるの。嬉しい。売れっ子なのに」

「当たり前でしょ。リュージは俺の可愛がってる後輩だし、ここ面白そうだからさ」

「わ~い」

女を酔わせる場は完全にできた。


< 26 / 35 >

この作品をシェア

pagetop