旦那様は社長 *②巻*

「悠河、光姫さん。この巻物はもう、あなたたちには必要ないわ」


「え?」


「私たちが過去に縛られる必要なんてどこにもない。だって、私たちは“今”を生きてるんだから。こんな古いしきたりなんて、今時流行らないわよ」


タマコさんは手にしていた巻物をポイッとゴミ箱に投げ捨てた。


「あースッキリした!死ぬ前に、ぜったいこうしようって決めていたのよね」


満足そうに笑っているのはタマコさんだけで。


会長も悠河もあたしも、石のように固まった。


あんなに大事にされていた有栖川の伝統が……。


もちろんあたしも従うつもりなんてなかったけれど、恐怖の存在だったあの巻物が……


あっけなくゴミ箱へ……?



固まるあたしの頭をタマコさんが優しく撫でてくれて、そこであたしは意識を取り戻した。


「タマコさん、あのっ」


「これからの有栖川を作っていくのは、あなたたちだから」


「え?」


「有栖川が本当の意味で豊かになれるように、あなたたちが変えていけばいいのよ」


「タマコさん……」


「今の悠星はきっと、私と同じ気持ちだと思うわ。……ね?」


振り返ると、会長が見たこともないくらい優しく笑ってそっと頷いた。


「会長」


「私は歴史を繰り返すところだった……」



最後に会長はもう一度、悠河とあたしに頭を下げて言った。



「有栖川の未来を、頼む」


< 398 / 409 >

この作品をシェア

pagetop