ラビリンスの回廊

運命



ぽたん、と頬にかかる水滴によって、玲奈は目を覚ました。


「──っつー……」


同時にピリッと頭痛がはしり、玲奈は一瞬目を閉じ、ギュッと親指でこめかみを押さえた。


そして、頭痛の原因を思い出す。


「あー……」


そうだ、目の前に『男』がいて……


そっと開けた玲奈の目には、今はどんより曇った空が映っていた。


「また、か」


また極度の男嫌いが発動し、気絶して倒れてしまった、と深いため息を吐き出す。


そうしながらやっと、むくりと上半身を起こした。


「……?」


玲奈は、やっと自分の目が信じられない光景を映していることに気付いた。


──空?


確か自分は、地下駐車場にいたはず。


そう思い、そろそろと辺りをうかがう。


「え!?」


驚愕に目を見開き、左右を見回し、目をこすって更にもう一度見回して、それが目の錯覚でないことを知る。


目に飛び込んで来たのは、濁り水のような色をした空と。

降りだしたばかりらしい雨。

そして、巨大な建物を崩したことを彷彿とさせる大量のレンガ石。



「……ドコ?」


全く見覚えのない景色に、玲奈は眉をひそめた。


< 7 / 263 >

この作品をシェア

pagetop