「はぁー」

 溜め息も、梅雨空のように灰色で重いよ。でも、ご飯は食べる。勿体無いし美味しいんだもん。

 残りのベーコンと玉子を食べていると、篠宮さんが「くっ」と笑った。

 ムッ! 何だか嫌な笑い方。

「何ですか?」

「いや、あんだけ酔っ払ってたのに、旺盛な食欲だな」

 うぐっ。お酒には強いんです、とはとても言いにくい。だって、ウォッカを生で飲む女なんて、嫌でしょ? 

 そんなあたしが記憶をなくしちゃうほど酔っ払ったんだから、昨日は相当飲んじゃったんだなぁ。

 固まったあたしをどう思ったのか、篠宮さんはテーブルの上に置かれた、バスケットの中のパンに手を伸ばした。

「食わねぇなら貰うぞ」

「え? あ……うん」

 あたしが頷くより早く、篠宮さんは丸い形をしたパンを食べていた。

 お腹が空いてるなら、コーヒーと一緒に何か頼めば良かったのに……。と思っていたら、ボーイが慌てて寄ってきた。

「オ、オーナー、お食事になられるなら、今すぐご用意しますから」

「気にするな。俺を特別扱いするなと、いつも言ってるだろう」

「ですが……」

「何だ? 俺が食べたら困るような物を客に出しているのか?」

 どう控えめに聞いても、意地悪としか言いようのないセリフに、ボーイさんは慌てて血相を変えた。


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