そして翌日。

 「受けます」と言っちゃった手前、あたしは覚悟を決めてアパートを出た。

「そんな似合わねぇリクルートスーツなんか、着てくんじゃねぇぞ」

 と別れ際に篠宮さんに言われ、夜中まで悩んだ挙げ句、二十歳のお祝いにお母さんが買ってくれた、オレンジ色のパンツスーツにした。

 結構気に入ってるスーツなんだけど、色がバリッバリのオレンジなものだから、絶対に就活で着てはいけないって大学から言われちゃって。

 だから、無難なリクルートスーツを買ったのよね。

 確かにあの紺色のスーツは、あたしに似合ってはいなかったけど、あそこまではっきり言ったのは篠宮さんが初めてだった。

 そう言えば、加奈子はあれを着たあたしを見た時、微妙な顔をしてたなぁ……。








 地下鉄を乗り継いで最寄り駅を出て、あたしは篠宮さんが紹介してくれた会社を目指して歩いた。

 場所は……何と、ヒルズがある、六本木ですよ! 流石は大企業。見上げるほどのビル全部が、一つの会社。しかも、ビルの前にはアリーナみたいな広場があるし。

 今更だけど、ビビった。

 だって、今まであたしが受けてたところは、広くてもビルの2フロアを使っている会社だったから。……規模が違いすぎるよ!

 そういうところでさえ落ちたんだから、こんなとこ受かる訳ないよぉ! 

 あぁ~、もう行きたくない! なんか胃がキリキリしてきちゃった。

 でも、すっぽかしたら……それはそれで、篠宮さんの顔を潰しちゃうことになるし、あたしだって篠宮さんに何を言われるか分からない。

 きっと凄く怒られて、その後で意地悪く鼻で笑われるんだろうな……。

 …………それだけは嫌だ! 篠宮さんのあの笑い方、本っ当にバカにされたみたいなんだもん! あの笑いをされるのだけはヤダ!

 としたら、行くしかないよね。はあぁ……。

 あたしは大きく深呼吸して、一歩踏み出した。



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