粉雪2-sleeping beauty-
a still room
―コンコン!

「―――ッ!」


ドアをノックする音に、ハッとして振り返った。



―ガラガラ…

『煙草係で~す。』


言いながら入ってきたのは、嵐だった。


俺達の空気を打ち破るように、嫌に明るい声だ。



「…何で…お前が…!」


目を見開く俺に、嵐は深いため息をついた。



『…商売道具の顔殴られたのに、店に戻れねぇだろ。』


俺を睨み付け、千里に向き直った。


『…可哀想に…。
こんなイカつい男に睨まれたら、普通は泣くよな…。』


安心させるように囁く嵐に、唇を噛み締めた。



『…いやぁ、アラスカの方まで買いに行ってたら、遅くなっちゃった。』


少しだけ笑った嵐に、千里も諦めたように力なく笑った。



『…知らなかったよ、アラスカにセブンスターが売ってたなんて。』



その瞬間、俺じゃダメなんと思った。


わかっていた筈なのに、

まるでダメ押しでもされたように、見せ付けられている気さえする。



ゆっくりと立ち上がり、千里に背を向けた。



俺一人だけ、息苦しくて…。


こんな場所から早く、逃げ出してしまいたかった。



『待てよ、マツ!』


「―――ッ!」


瞬間、嵐に呼び止められた。


< 211 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop