粉雪2-sleeping beauty-
glittering stars
いつの間にか、辺りは真っ暗闇に包まれた。


凍てつく寒さに、だけど星が輝く。


吐き出す息は白く、身を縮めて車に向かった。



「ちょっとドライブでもしますか。」


『…楽しみだね。』


俺の言葉に、煙草を咥えた千里は笑顔を向ける。


エンジンをかけると、通気口からは冷気が流れ出した。


だけど繋いだ手は暖かく、車の中を二人分の熱気が包む。



「…とっておきの場所に行くから。」


『え~?何ソレ??』


口角を上げて言う俺に、千里は目を輝かせた。


それを確認し、シフトをドライブに入れる。


大音量で流す音楽は車を振動させ、

テンションの上がったらしい千里は相変わらず笑っていた。



「…そこにお前が座ってると、安心するんだよ。」


かき消されてしまうほどの声で言った言葉は多分、千里には届かなかったのだろう。


ただ流れ続ける光の筋を、千里は見つめていた。


そんな光景に少しだけ呆れ、音楽のボリュームを下げる。



「…聞けよ、俺の話。」


『…何か言ってたの?』


キョトンとした千里は、不思議そうに聞いてきた。



「…教えてやらねぇよ。」


『え~?意味わかんない。』



わかんなくて良いんだよ…。


だって聞こえてたら、引き止める言葉になってたかもしれないんだから…。


悲しそうな顔なんて、させたくなかった。


そんな顔、見たくなかったから…。


だから、教えてやらなかったんだよ。



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