ー親愛―
ー親友ー






真っ赤な太陽が寂しさを募らせる秋が過ぎて いつの間にか私の嫌いな季節がやって来ていた




同じ学科の娘達は就職活動と 単位を落とさないように適当な遊びに明け暮れている時 私は就職活動というモノにほとんど縁がないまま 毎日を過ごしていた




“ええなぁ。八重は…”




自販機で買ったホットココアを啜りながら 沙耶は 学校から配られた就職説明会のパンフレットを見ていた




“どこがええんよ?”




相変わらずの京都訛りの話し方を 少し真似して言ってみた




“あたしは、こんなに毎日頑張ってんのに、イイ所見つからんわ…”




“…大変そうだね。”




少し茶化したのが なんだか申し訳ない気がした




そんな私に気を使ったのか




“イイ就職先は見つからんけど、イイ人見つけたんよ”




一ヵ月ほど前に彼氏と別れてから。ってか、普段から男の事について何も話さない沙耶が、珍しく気に入った男の事を話した




“何処で知り合ったの?”




“知り合ったっていってもな…むこうは、あたしの事知らんのよ。…あたしの片思いやから…”




これまた珍しいじゃん




私は 沙耶が惚れた男が気になった。




どれほどの男が沙耶の心を虜にしたのか…。



沙耶を取られたような、少しヤキモチにも似た気持ちを隠せないまま




沙耶が 今日も会いに行くという男に私も付き合う事にした





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