…待って。


何かが頭をまた過ぎる。




ううん、目の前を過ぎる。



あれは誰?





寝巻姿の、子供。




高い位置にあるはずの窓枠を、




よじ登って窓から部屋に入って来る、子供。





「…お母さん?」





私は自分の目を両手で押さえた。




…これは、お母さんの目。




お母さんの目を通して、



私はお母さんが最期に見た物を、脳裏で見ていた。




…何も聞こえない。ただ、見える。




…ペットボトルに入った液体を振り撒きながら、



寝室に入って来る子供。



隣に眠っていた男の人が、何か叫びながら起き上った。



そして、液体を振り撒く子供を止めようと、



腕をしっかりと取り押さえる。




…その子供の手に握られていた小さなライターから、


ポッと小さく放った赤い火が、



一瞬にして子供と大人の男の2人の姿を大きな火で覆う。





…男の人が、何か喚きながら部屋中を駆け回った。



子供も何か叫びながら、



ドアの方に突進していく。




…部屋中が真っ赤な炎に包まれる。



そうして、いきなり目の前が暗くなった。




…お母さんが見た、最期の光景。




…それは…。







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双子  記憶喪失  幼なじみ  火事  切ない