視線、ですか、と、教授は笑う。





はい、と、




高崎修吾は、敷島彗のカルテを捲りながら、




教授に報告をする。





…10年前に、




家族全員を、深夜の火事で失った少女。




その直後から、少女の心のケアにあたって10年。





…火事で家を無くし、家族の全てを失った少女は、




そのショックから、幼少期の記憶のほとんどが抜け落ちている。




覚えているのは、




火事で家族全員を失ったこと。




その後ずっと、祖母と2人で暮らしていること。




この2つだけ。




…その両方共、火事から時間を経て、




一緒に暮らしている祖母が教えた『情報』であって、




少女自身が覚えていた訳ではない。




…少女はそれを知らない。





家族全員が亡くなった、




そうとしか聞かされていないから、




自分に双子の兄がいたことも覚えていない。





…知らなくていい記憶は、植え付ける必要はない。





…たった6歳で亡くなった双子の兄の事を教えて、悲しませる位なら、




それが少女の祖母の考えのようだった。

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双子  記憶喪失  幼なじみ  火事  切ない