だから、大切なことを、少女は思い出せない。




今の彼女はいわば、生まれてから6年間を『造り上げられて』



その後の10年を生活しているだけの『マリオネット』のようなもの。




…少女自身の身体に関わる大事なことなのに、




少女の祖母の中で、排除された事実は、彼女の中にはない。




…確かに今は完全に健康体の少女に、




敢えて今更言う必要もないだろうが…。






「…火事の直後、完全に記憶を失っていた彼女は、


見えるはずの無いものが見える、と言うことはよく言っていました。…


だけど、『見られている』そう言うことを言ったのは、今回が初めてです」




高崎修吾の説明に、教授は高級そうな革張りの椅子にふんぞり返るように座って、




見えるはずの無いもの、ねぇ、と、




鼻の下に伸ばしたヒゲに触れる。

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双子  記憶喪失  幼なじみ  火事  切ない