1階の和室で眠っているお祖母ちゃんを、起こさないように、




ゆっくり、音を立てないように、階段を下りた。





昔からの古い造りのお祖母ちゃんの家は、




思わぬところでも、床が軋む。



そのギィって木の軋む音が、




夜中の静まり返った家中に響き渡る気がして、




階段が軋む度に、私は足を止める。





…だけど、お祖母ちゃんの部屋から、物音はない。





と言うか、床が軋む音位でお祖母ちゃんが起きる訳がないって、




私は自分でもわかっているのに。




お祖母ちゃんはだいぶ耳が遠くて、



食事の時にする会話も、私は半分、大声を上げて喋っているようなものだし。





…かと思うと、聞かれる訳がないと思って、




低い声で独り言を言ったりすると聞こえていて、驚いたりもする。




老人の難聴って、そういうもんなんだって、何かで聞いた。




高い音や声は聞こえなくて、低い音や声がよく聞こえる。





それなら、床が軋む音は低い音かな。





…自分の考えに考え直して、やっぱり私は慎重に玄関まで辿り着く。





硝子の引き戸を、




やっぱり音に気を遣って、少しだけ開いて、




目の前の通りに目をやる。





…男は、さっきと変わらず、電柱の脇に立っていた。

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