星の腕に付けられている、




腕時計の秒針の音すら聞こえそうな沈黙だった。




…長い昔話を終えて、星は大きく溜め息をついた。




私は、初めて知るあの夜の真相に、




口を挟むことも出来ずに、ただ黙って聞いていた。




…私が知っているのは、その後のことだけ。




誰かの通報で駆け付けた消防隊に助け出されて、病院に搬送されたこと。




目覚めた時に、お祖母ちゃんが、



彗ちゃん、これからはばあちゃんちで一緒に暮らそう、って言ってくれたこと。




…私の記憶は、いつからが本当に自分の記憶で、




どこまでが人から与えられた情報なんだろう。





…火事で家族を失った事は、お祖母ちゃんから聞いた。





今私はお祖母ちゃんと一緒に暮らしてるんだから、




火事の後お祖母ちゃんと暮らすようになったって言うのは、自分の記憶だと思う。





…だけど。




自分の名前にしても、




目覚めた時にみんなが『彗ちゃん』って呼んだから、



私の名前は『彗』だって認識しただけで、




きっと本当は自分の名前すら忘れているに違いない。





…お祖母ちゃんにしたって。





お祖母ちゃんと一緒に暮らそう、って、普通に言われたから、



疑いもなく、この人が私のお祖母ちゃん、ってすんなり認識しただけで、




本当は赤の他人だってことだって、十分に考えられるんだ。





そう思いながら、疑心暗鬼になっている自分が嫌になる。




…そんな陰謀めいた話が、普通の子供相手に、突然湧いて出る訳がない。





だから、私も邪念を払う。

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双子  記憶喪失  幼なじみ  火事  切ない