不思議の国のアイツ -暴走族総長純情伝-
序章:懐かしき街

10年前-


「ルミちゃん、やっぱりいっちゃうの?」


コウは、目に涙をためて今にも泣き出しそう。


山下 コウ、6歳。


私の幼馴染みの同級生。


男の子のくせに女の子のような顔をしていて、近所のいじめっ子によくいじめられていた。


そんなコウを私、柴崎ルミは、いつもいじめっ子から守ってあげていた。


小さい頃の私は、同級生より背が高くて男勝りの性格をしていた。


それも中学生に入るまでだったけど、私の身長は中学に入った時に止まってしまう。


155cm。


せめてもう5cmくらいは欲しかったけど、女の子だから特に身長で困ったこともない。


両親は、中学に入ってから、めっきり女の子らしくなった私の性格に安心したらしい。


母親はよく、「小さい頃は男の子と間違えられてたのにね。」と安心したような表情で昔話をする。


そんな私に守られていたコウが、私の引っ越しを悲しむのは当然の成り行きだった。

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